日本の祭りレポート
うしおにじんじゃれいさい てんのうまつり
佐渡海峡は英仏海峡より少し幅が広く、時速65キロのジェットフォイルで新潟港からおよそ1時間。そこは長い時代にわたって各地の文化が集積し、いまでも古式がよく残されている文化・芸能の宝島。そのひとつ、牛尾神社の天王祭は12日の宵宮では境内の神楽殿で坂上田村麻呂の薪能「田村」と鬼太鼓の演奏が、翌例祭では拝殿で神楽自体が神事の稀少な神事神楽が舞われます。太鼓・笛・鉦に楽曲にあわせて演じられるのは天鈿女の舞、猿田彦の舞、神明神楽、事代主の舞、五段神楽、大国主の舞。
佐渡は順徳天皇、日蓮、世阿弥などが遠流された島で、能がここに伝わったのは金山奉行で能楽師の大久保長安が神社に奉納したのに始まるとされています。かつては200以上の能舞台がありました。能を通じて人間の深奥を感じる佐渡。故郷に帰ったような懐かしい空気が漂います。
[取材・文:苦田秀雄]