日本の祭りレポート
いばのさかくだしまつり
これはほぼ垂直の崖から神輿をおろすという荒行。高低差は175メートル。祭りは前日に山頂の繖峰三神社(さんぽうさんじんじゃ)に神輿3基を上げ、当日の朝、三ノ宮・八王子・二ノ宮の順で坂下りをするもの。1基の重さは500キロ以上。最大の難所は60度の急勾配「二本松」で、次に「台懸岩」「僧衣の岩」「本堂抜け」などの難関ポイントが続きます。若連中になったばかりの15歳の「初山」2人が神輿の前に座らされます。それは伊庭の男になるための度胸試し。彼らは綱にしがみつき、目を固く閉じ、顔面蒼白。“目の前は遠くの景色だけで足元には何もない”と言います。神輿は岩を削り飛ばしながら、スローモーション映像をみるように坂を落下。
【取材・文:苦田秀雄】
滋賀県東近江市の伊庭地区で毎年5月に行われる伊庭の坂下し祭りは、850年以上の歴史を持つ、近江の奇祭のひとつです。繖山の山頂にある繖峰三神社から麓の大鳥居まで、岩場の急斜面を、若衆たちが3基の神輿を引き下ろす神事です。伊庭の男たちが危険を顧みず魅せる、勇壮かつ果敢な姿が魅力の春祭りです。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り