日本の祭りレポート
なち・びえいひまつり
昭和63年(1988)12月16日十勝岳(2,077メートル)が噴火し、美瑛一帯を暗雲が覆いました。祭りは山の神の慰霊と震災で打撃を受けた地域を元気にしようと平成元年に始まったもの。美瑛を開拓したのは和歌山から入植した田中儀太郎を団長とする27世帯。いまはラベンダーで有名な美瑛ですが、かつてはそうではなく、入植者の苦労によって北海道を代表する穀倉地帯に生まれ変わったのです。町民は先祖の故郷和歌山県に出向き、熊野那智大社から「那智の火祭り」を教わりました。美瑛神社で採火された火は十勝岳山頂に運ばれて山の神を慰め、ふたたび美瑛に帰ります。そして数10本の松明に点火されて勇壮に町を練るのです。
【取材・文:苦田秀雄】
勢子たちが約40キロの燃え盛る大松明を夜の町内で12本、神社内で12本を担ぎ練り歩く祭りです。
平成元年より和歌山県の熊野那智大社で千年以上続く「那智の火祭」を譲り受け、火と水を崇め、自然の恵みに感謝する神事で、美瑛町の繁栄と十勝岳の鎮静、大松明に書かれた願い事を祈願しています。