日本の祭りレポート
なつごしさい・ひまつり(おっとーらんさい)
この祭りのある広島市中区江波は、埋め立ての進んだいまでこそ小さな入り江になっていますが、元は漁業の盛んな小島でした。江戸時代中期、宮島・厳島神社の管絃祭で遭難した船を江波村・阿賀村の漁師が救ったことから、その後、管絃船の曳航に加わるようになり、その勇姿を地元でも披露しようと始めたのが祭りの起源といいます。祭りを拝見して興味深かったのは、地場産業である「牡蠣の養殖」が行事のはしばしに見られたことです。港で焚く大きなかがり火は養殖に使う筏(いかだ)の廃材。子ども達が「オットーランジャイ、コラコラ」と囃しながら叩く一斗缶は牡蠣の容器(新品)やバケツ。港内で祭りを見つめる観客の中には、養殖関係と思われる東南アジア系のグループも。生業とのかかわりの中に、等身大の祭りが感じられました。実施日「旧暦6月29日」は新月の日。潮の満ち引きと関係しています。
[取材・文:加藤正明]