日本の祭りレポート
たなぶじんじゃれいさい
青森県下北半島は吹雪の中で生きる「寒立馬(かんだちめ)」や「北限のサル」でも知られる本州最北の地。極めて厳しい自然環境に暮らす人びとが夏の賑わいとして永年大切にしてきたのがこの祭りです。贅をつくした五台の山車による練り、神楽殿での栗山太神楽(くりやまだいかぐら)などの奉納。夜の闇に浮かび上がるそうした文化・芸能の華やかさは往時の人びとにとってきっと強烈な生命力のシンボルだったことでしょう。日本海を行く北前船から都の息吹を吸収し、勢力を誇った盛岡あたりからも影響を受け。夏の間に、祭りをとおして極寒の季節を乗り越えるだけの熱量(エネルギー)を地域に蓄えておく必要がこの地にはあった…。切ないくらいの想いが、来年の再会を誓う「五社別れ(ごしゃわかれ)」にも現われているように思えてなりませんでした。
[取材・文:加藤正明]