日本の祭りレポート
じょうはなひきやままつり
ここは散居村*で有名な越中平野、南砺市城端。6基の庵屋台がそれぞれ曳山を先導して街を進みます。庵屋台は「庵唄所望」の張り紙のある家の前に止まり、「庵唄」を披露。三味線、竹笛、太鼓などの演奏で朗々と流れる唄は江戸端唄の流れをくみ、屋台の造りは京都祇園のお茶屋の建築様式を伝えるもの。東西文化の融合です。それぞれの曳山には恵比須、大黒天、布袋などの御神像が載せられ、その豪華さはかつて絹織物で財をなした商人たちの誇りを如実に語ります。祭祀と花柳界ドッキングの印象あり。
祭り最終日5日の夜、6基の曳山が若者たちに押され、列をなしてそれぞれの町内に帰ります。ギーギーの車輪の音がひときわ大きく、今年も終わりました。この寂しさは何なのでしょう。遠ざかってゆく曳山を眺めれば哀しみがこぼれ落ち、あれは夢だったのか、と思うばかり。
*散居村:広大な平野に民家がちらばって点在する集落形態。ここでは家の周囲を樹木が取り囲み風防の役を果たしている。
[取材・文:苦田秀雄]