日本の祭りレポート
まりもまつり
神事は藁葺きの質素な住居(チセ)で行われます。2人の若者が白い酒を神妙に味見し、長老(エカシ)から順に酒が注がれ、それを刀に浸して小屋の中にあるあらゆるものに振りかけます。そして全員が器を両手に恭しく捧げ、“ううううう”と、小さな声を発しつつゆっくり左右に振り、静かに飲みます。
外で待っていた250人ほどのアイヌの人々はマリモを先頭に、阿寒湖にむけて行進。絶え間なく歌われるのは“マーリモ ホープニナー ホープ クンケー ヘーツイ”。これは“マリモ 起き上がりなさい マリモ 旅立ちなさい”という意味。マリモは丸木舟に載せられ、湖上に出て、再び自然に還されました。“イナンカラプテ(あなたの心に寄り添わせてください)”アイヌの人々の優しさが胸にしみます。
【取材・文:苦田秀雄】
絶滅や盗採(とうさい)から阿寒湖のまりもを保護保全する目的で昭和25年に生まれた祭りで、アイヌ民族の伝統的な神事としてとり行われます。自然の神々へ感謝の祈りが捧げられ、まりもを「迎える儀式」そして阿寒湖に丸木舟を浮かべ、エカシの手により湖水に還す「送る儀式」は、神聖な情景です。このほか、まりも踊り行進やまりも御輿などが行われます。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り