日本の祭りレポート
おごうちじんじゃ れいたいさい
ここは東京都の西の最奥、多摩川の最源流。峠を越えれば山梨県、「敬神行楽の浄地」とされます。青梅街道の眼下に広がるのは満々と水をたたえた小河内ダム湖。昭和32年(1957)、東京都の水がめとして完成したものです。それにより村の945世帯が湖底に。縄文のころからこの谷あいで人々の生きた証が消えたのです。でも文化は消えませんでした。奥多摩町全域に獅子舞をはじめ20もの民俗芸能が伝承されているのです。
さわやかな風にちいさな秋を感じさせる小河内神社の境内にやってきたのは川野獅子舞。花笠、囃子方、3頭の獅子など。闊達な演技が終わり、神事があり、続いて原獅子舞。最後が鹿島踊です。この踊りは旧小河内村の日指、岫沢、南の3集落に伝わり、水没以前は加茂神社と御霊社で奉納されていたもの。女装の踊り手6人はすべて男性でなければなりません。室町時代の空気を感じます。東京都にこういう文化が残されているのに驚き。
取材・文:苦田秀雄
小河内貯水池建設のために水没した旧小河内村に伝わる獅子舞や踊りなどの郷土芸能。かつてその地に祀られていた温泉、金御岳、箭弓、貴船、愛宕、熊野(青木)、御霊、加茂、御岳(留浦)の九社十一祭神を勧請して創建されたのが小河内神社。一つには敬神行楽の浄地として、一つには首都用水の護り神として祀られています。(【小河内の鹿島踊】国指定 重要無形民俗文化財)
※出典:ダイドーグループ日本の祭り