日本の祭りレポート
おしっさまのおわたり
この村のはずれに「死児の橋」という文字が刻まれた古い石碑があります。言い伝えでは、かつて村に怪物が出た年はきまって凶作に。そこで幼児を生贄として怪物に差しだせば豊作に恵まれたとか。この石碑は怪物に幼児を差しだしていたとされるその場所に作られたものなのです。ある時、猿田彦の子孫と名乗る侍がやってきて怪物を退治しました。祭りはその侍を称えるために始まったと伝えられています。
祭りの主人公である猿田彦(ハナオッサマ)と天鈿女(オシッサマ)は高尾神社の境内の「宵の宮」に祀られています。祭りの夜、この2神が800メートル先にあるお旅所の「待手の宮」にお渡りするのが宵宮祭のクライマックスです。ハナオッサマが行列を先導し、オシッサマゆっさゆっさと進みます。子供らが「人身御供の唄」を唄います。“サイヨリミヨリ、イテデコデントイコマイカ、センコノハシ(死児の橋)ヲコシタナラ、イケーチチヲニギラシテ、ナンバミソイヤナラゴットミソ”。行列が「死児の橋」にさしかかれば太鼓は一段と激しく、まさに愛児を弔うかのごときです。その夜神々は「待手の宮」に一泊して翌日の本祭に宵宮と同じ体裁で高尾神社に還御。
取材・文:苦田秀雄
高雄神社の秋季例大祭の行事。その昔、人身御供として捧げられた幼子を助け怪物を退治した侍を称え、侍の祖先という猿田彦命(天狗神)、天鈿女命(オシッサマ)を祀る神事。例大祭前日の夜、子どもたちの人身御供にまつわる唄が流れる中、オシッサマが生贄を出したとされる橋近くの松手の宮まで渡御。本日(ほんび)には還御となります。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り