日本の祭りレポート
うぶしまはちまんぐう れいたいさい
地区の多くがデコポン(柑橘の一種)農家という天草市上平地区に伝わるこの祭り、かつては農具や陶器の市も立つほど、地区内外からたくさんの人出がありました。目の前に浮かぶ産島は天草富士とも称される、なだらかなピラミッド型の美しい島。陸地と島の間の早瀬ではエビやカサゴなど身のしまった良質の魚が獲れます。穏やかな気候のもと、この産島を視界のどこかに入れながら顔見知りの仲間たち(少なくなったとはいえ)と過ごす何気ない毎日こそ地区の財産。そして、年に一度、産島に船団を出して神様を迎え、豊作や海上安全などを願って大掛かりな神幸行列などでもてなす秋の例大祭も大切な儀式です。産島には峠の神様「トンカンサマ」も祀られており、鹿児島県の長島修験や真言宗の影響もうかがわれます。全国的にも珍しい「海を渡る祭礼」、200年以上の歴史があります。
取材・文:加藤正明
不知火海の無人島、産島。神功皇后が皇子を出産したという言い伝えが名の由来です。この「産島八幡宮 例大祭」は全国でも珍しい、ご神体が海を渡る祭礼です。島から出て「お下り」したご神体は対岸の上平地区の十五社宮で1泊し、翌日、再び海を渡って「お上り」します。十数隻が大漁旗を掲げる海上行列は壮観です。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り