日本の祭りレポート
ふないち
「ふなんこぐい」の風習は醸造元の旦那が正月返上で働いた従業員をもてなす「20日正月」です。それは従業員に鮒をご馳走し、恵比須様や大黒様にもお供えして商売繁盛を願うもの。この風習はかつて有明海沿岸部一帯にありましたが、いまはここに残るのみ。これはハレの日という特別な祭りの風習ではなく、日常の一コマなのです。生きた鮒をそのまま昆布にくるんで大根、ゴボウなどのぶつ切りといっしょに大鍋で一昼夜煮ます。翌朝、酒蔵通りに露店をならべて売るのです。「ふなんこぐい」に“懐かしいおばあちゃんを思い出す”という人も。祭りの音や食べ物の味、それは亡き人たちや故郷の風景への恋慕。肥前浜宿の通りは明治から大正時代の風情。
【取材・文:苦田秀雄】
江戸時代から300年以上続くふな市。毎年1月19日早朝から、酒蔵が建ち並ぶ通りを中心に生きた鮒を売る市が立ち、大勢の人で賑わいます。人々は鮒を昆布巻きし一昼夜煮詰める郷土料理「ふなんこぐい」をつくり、二十日正月に恵比寿様にお供えしたり家族で食べたりして商売繁盛を願います。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り