日本の祭りレポート
いりやはちまんじんじゃれいたいさい
沿岸部にある南三陸町のキャラクターは蛸(多幸)。近くでマスコットが作られていることもあり、入谷八幡神社にはユーモラスな「オクト(置くと)パス」君が鎮座し、合格祈願・学業成就祈願の参拝が絶えません。この神社の例祭で270年前から奉納されているのが入谷打囃子(いりやうちばやし)。こちらは、祭りを担う4つの地区(講)が当番制でうけ受け持ち、獅子とそれを鎮める獅子愛子(ししあやし)のやり取りで物語がつづられます。軽快な笛の音、迫力ある大太鼓、子ども達による小太鼓。里を練り、境内で奉納したあとは、御旅所「一本松」へ。山々の緑と田の黄金色を背景に、華やかな祭り衣装の人びと、そしてばれんと呼ぶ花飾りを無数につけた山車が進みます。その純朴は、かつて農村のすべての祭りが持っていたはずのもの。農業、畜産、養蚕(往時)など、日々の生業への感謝と祈りがあふれる美しい祭りです。
[取材・文:加藤正明]