日本の祭りレポート
やしろせいねんほうのうかぶき
八幡宮で神事が始まり、拝殿から「養老」「高砂」「鶴亀」の小謡が流れてきます。どこからか“は~じ~ま~り~”の掛け声が。八代の八幡様はことさら歌舞伎がお好きと伝わります。舞台では農村歌舞伎・「式三番叟」が開幕。さらに黒い着物に黒笠を手にした青年団5人の「大黒踊り」。おひねりが飛びます。演目は平賀源内原作の歌舞伎「神霊 矢口渡」へ。さらに幕間には稲作の所作をおもしろおかしく表現する「豊年踊り」があり、その間次の演者は楽屋であわただしいメーキャップ。フィナーレは感動の演目「菅原伝授手習鑑 寺子屋の段」。それは主君菅原道真のために我が子の命をさし出した親の物語。泣けます。演者は23人。農村青年団の手づくり歌舞伎。味があります。
【取材・文:苦田秀雄】
芝居が好きな八幡様に奉納することで地域の豊作を祈願する、農村歌舞伎。300年以上続く歌舞伎を守るのは、伝承に力を注いだ先人「いなきさん」の教えを受け継ぐ地域の青年団。明治初期に創建された回り舞台とともに、親から子へ、子から孫へと受け継がれています。毎年11月5日神祭の夜に、人々が神とともに舞台を楽しみます。(「八代八幡宮の回り舞台」国指定 重要有形民俗文化財)
※出典:ダイドーグループ日本の祭り