日本の祭りレポート
さきはまはちまんぐう れいたいさい
この祭りで注目されるのは「俄」と「獅子舞」です。「俄」とは江戸から明治時代にかけて流行した、時代を風刺した即興劇。それは庶民が大っぴらに口に出せないことや地域の話材を面白おかしいパフォーマンスで表現するもの。起源は平安時代の「猿楽」にあり、後世大阪の新喜劇につながるものとされます。いまでも各地に脈々と伝わる日本の大衆娯楽です。
ここは太平洋を目の前にする四国最南端室戸の佐喜浜八幡宮。10月、南国土佐の海風が優しく頬を撫でます。その長閑な空気を破ったのが「狂い獅子」。これほど獰猛に、荒々しく舞い踊る獅子舞は類をみないもの。さらに始まったのが「佐喜浜俄」。“この町には家がいっぱいある。だけど誰も住んどらん。老人ばっかりや。だから追いかけられる心配がないき、おらも暮らしやすうて助かっちゅう”それは猿を模した衣装に身を包み、化粧をほどこした若者。観客の笑いを誘います。地域事情のいっぱいつまった南国土佐の長閑な祭りです。
[取材・文:苦田秀雄]