日本の祭りレポート
やまのかみまつり
この祭りは神社ができる前の祭りの形を残すものとして貴重。当屋の家を出た御神幸は神事の行われる渓谷まで村道をゆっくりと進んできます。囃子は太鼓と笛だけ。笛には音階がなく、それも古態。渓谷にある御神木は沢を挟んで左が樫の「男神(おんがみ」」、右は杉で「女神(めんがみ)」。それらは菰(こも)にくるまれ、いくつもの幣串が刺され、注連縄が張られ、根元の祭壇には鯛と餅が供えられています。祝詞は何度も丁寧に繰り返され、それが終わると渓谷を挟んで鯛と餅を投げあい、その場で焼いて食されます。最後にクジで次の当屋が決められます。それは住民(12世帯)全員参加。観客の目の前での抽選です。逃れられません。
【取材・文:苦田秀雄】
岩国市由宇町北西部の山間にある小さな集落・清水地区で行われる祭りで、5年に一度、五穀豊穣を祈り村人を守る祖霊を森に迎える、古い形式の祭事です。鎮守の森で神木を神と崇めて行われる、簡素で厳かな「奇祭」であるこの祭りは、鎌倉時代から記録が残り、県指定無形民俗文化財に登録されています。
※出典:ダイドーグループ日本の祭り